英語民間試験と記述問題の実施に関する検討会議は20年末までに結論を出すとしたものの、「共通テストが実施される前に結論を出すのはいかがなものか」といった意見があり、結論は先送り。文科省は「結論は春以降」(担当者)というが、毎年6月に大学入試全体の指針である「入学者選抜実施要項」を公表するため、夏までには出すと見られる。そうなると、現在の中学2年生から下の学年が対象となる。

 一方で、検討会議の関係者は「民間試験も記述問題も実施しないという結論もあり得る」という。実際、受験関係者の間では実施に関して否定的な意見が多い。ある大手予備校幹部はこう語る。

「50万人もの受験生をブレなく採点するのは人間には不可能です。英語の試験についても平等な環境をつくるのは難しい。環境が劇的に変わらない限り、共通テストでの実施はないでしょう」

 現実的な落としどころとして考えられているのが、各大学の個別試験での導入だ。実際、共通テストを利用した上で英語民間試験や記述問題を導入する動きが出ている。

 早稲田大では今年の入試で政治経済学部が外国語、国語、数学I・A、選択科目(地理歴史、公民、数学、理科のいずれか)を共通テストに置き換えた。これに加えて学部独自の試験を実施し、記述問題が入る予定だ。上智大でも日本英語検定協会のTEAPを利用した入試に加え、学部学科試験と共通テストを併用した入試などを実施する。青山学院大立教大でも共通テストや英語民間試験を活用する動きがある。

 今後、各大学で同様の動きが出てきそうだ。それは別の要因も絡む。大学入試に詳しい教育ジャーナリストの神戸悟さんは「中小の大学では試験問題を作れる教員が減ってきている」と見る。予備校などに外注する大学も増えていると言われる。

 背景にあるのは、一般教育科目を学ぶ教養教育の廃止だ。1991年に大学設置基準が緩和され、大半の国立大で教養部が廃止され、私大でも姿を消した。その結果、高校教育と専門教育を橋渡しできる教員が必要とされなくなり、入試の作問をできる教員が減ったと見られている。

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