ただ、32年大会招致を目指す都市・国は多い。韓国・北朝鮮(共催)、重慶・成都(中国)、インド、インドネシア、カタール、ブリスベン(オーストラリア)などだ。さらに、ブダペスト(ハンガリー)も立候補を目指すことをAP通信が28日伝えた。
鈴木氏は、32年案について否定的だ。
「32年の開催地にIOCが期待するのは開催したことがない大国インドやアフリカ大陸。平昌五輪の後にバッハ氏が韓国と北朝鮮の共催を仕掛けた思い入れもあります」
32年大会の直前となる30年冬季大会は札幌が有力候補。招致レースはこれからだが、同じ国による2大会連続開催は東京には不利に働く。
鈴木氏は「無観客を公言すべき」と言う。
「中止を避けたいIOCは、無観客でも開催してほしいとほのめかしています。チケット収入が無に帰すことなどに躊躇(ちゅうちょ)する日本側が折れて、自ら言いだすのを待っている状態です」
スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は、今回の五輪開催をめぐるドタバタについてこう語る。
「五輪の開催について大きな鍵を握る米国でも、東京には行きたくないという選手が出てきていると聞いています。日本の関係者を含め、現実を直視せずに『何が何でもやるんだ』『とにかく頑張る』という中身のない姿勢はお気楽としか言いようがありません。世論との隔たりは悲劇的です」
(本誌・秦正理)
※週刊朝日 2021年2月12日号