■対応すべきは過去や未来でなく「今」

 私は、そうではないだろうと思います。私が、イェジンさんに前述の1週間のお試し期間に「あなたの言うことを何でもするから、好きになって」といって好きになってくれることもないだろうと思います。

 私の理解では、
「あなたに助けを求めたけど、あなたは聞いてくれなかった」
 と、「今」言っていることが重要なはずです。これに「今」どう対応するかが課題です。

 経験的にダメな対応はわかっています。

・謝る
・事情を説明したり、反論したりする
・これからはこうするという

 などです。

 じゃあ、どうしたらいいのか、と聞きたくなるのが普通だと思います。紘三さんも智弘さんもお聞きになりました。私は「あなたに助けを求めたけど、あなたは聞いてくれなかった」という気持ちをわかってほしいということだと思いますよ、とお伝えしたら、

「それはもう十分わかっています。」

 とおっしゃいます。智弘さんの妻に聞いてみました。

「智弘さんは、こう言っていますが、わかってもらえている感じがしますか?」

「いいえ、まったく。この人はいつも口だけなんです」

 妻はこうおっしゃいました。私の理解では、「今」行われているこのやり取りこそが糸口です。上述のダメな反応は、過去の説明や謝罪、将来の約束で、いずれも「今」の話ではありません。

 糸口を見つけたいとおっしゃる方は、糸はきれいに巻かれていて、糸口を見つければ(多少の苦労があるにしても)あとは糸を引っ張っていけば自動的に問題が解決するというような無意識の前提がありますが、本当は、糸がきれいに巻かれてないことが問題なのです。だから、糸口にたどり着くというステージと、糸口にたどり着いてからそれをほどいていくという2つのステージがあります。

 智弘さんの立場なら、どう答えるでしょうか?

 関係がすでに険悪なのでなければ、こういった話をしておくのは、二人の関係をよりよくするために有効なことです。

                        (文責:西澤寿樹)

※事例は、事実をもとに再構成しています。

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