安倍首相は「いません」と答えた。
「一人もいないのですか」と私は言葉を強めて確かめた。
「そうですね。一人もいません」
安倍首相は、少し間をおいて答えた。答えにくそうな言い方であった。
「国会議員は政治、政府はこうあるべきで、こういうことが起きてはならないと真剣に考えているべきだが、一人もただしてこないということは、自民党の国会議員は安倍首相に対するゴマスリばかりに懸命になっていて、この国のこと、国民のことを主体的に考えていない。つまり、どの国会議員も無責任だということになりませんか。こんな国会議員ばかりだとこの国が危ない、と心配になりませんか」
私は安倍首相が怒って、会談を打ち切るのではないかと恐れたが、安倍首相は苦笑しながら、
「田原さんに言われれば、そのとおりだ」
と率直に答えた。
もっとも、その後に「桜を見る会」問題、河井克行(元法相)、案里夫妻の事件が起きているが……。
いずれにしても、今回の緊急事態宣言下での自民党議員3人、公明党議員のとんでもない行動は、国会議員であるという認識がまったく欠如していて、自らが資格なしと露呈させているのである。
※週刊朝日 2021年2月19日号
■田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社.