しかし同門カミラ・ワリエワ(14)が飛躍的な成長をし、4回転とトリプルアクセルを習得。来季の北京五輪ではシニア年齢に達し、ワリエワが北京の金を手にするとも言われている。

 また大技なしで、ロシア女子の鉄壁に食い込もうとしているのが坂本花織(20)だ。スピード感溢れる滑りとダイナミックなジャンプで、高得点を狙う。

「集中すれば自分の演技ができることがわかったので、思い切りいきたい」

 例年なら、五輪まで1年を切り、順位争いに注目が集まる時期。しかし今季は、各国でコロナと闘いながらスケートを両立させ、この大会にたどりついたことの意味があまりにも大きい。それぞれの責任感から生まれる演技の一つ一つが、激しいうねりを生み出す大会になるだろう。選手たちの魂をこめたメッセージをしっかり受け止めたい。

(ライター・野口美恵)

AERA 2021年3月29日号より抜粋