紀平梨花(きひら・りか)/昨年12月の全日本選手権で、4回転サルコーを決め2連覇。前回19年の世界選手権では4位だった (c)朝日新聞社
紀平梨花(きひら・りか)/昨年12月の全日本選手権で、4回転サルコーを決め2連覇。前回19年の世界選手権では4位だった (c)朝日新聞社

 フィギュアスケート世界選手権が3月24日に開幕する。今大会は無観客開催、選手や関係者らは感染予防対策を徹底したエリアで過ごし、大会終了まで一度も外に出ることがない。そんな厳戒態勢の中、紀平選手が意識しているのはロシア勢だという。AERA 2021年3月29日号では、ロシアと日本、それぞれの女子代表選手の戦略と現状を取材した。

【写真】男子ではこの選手も表彰台が期待される

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 女子は、昨季に火が付いた4回転競争が、どう変化していくかの見極めが重要だろう。

 紀平梨花(18)は、全日本選手権で初めて4回転サルコーを成功。234.24点の高得点で、世界への手応えをつかんだ。

「今回、試合で4回転サルコーを跳ぶことができて、試合で跳ぶイメージがわきやすくなりました。この感覚を覚えておいて、練習して、世界選手権でも4回転を跳びたいです」

 全日本後は、米国コロラドスプリングスで強化合宿し、「トリプルアクセル+3回転トーループ」など、大技の連続ジャンプも成功。好調なトリプルアクセルに4回転が加わり、ロシア女子と対等に戦う準備はできた。

「やはり意識しているのはロシアの選手。自分は初めて4回転を決めることができましたが、彼女たちはもっと難度の高い4回転を跳んでいて安定感もあります。世界選手権はオリンピックに向けた重要な試合なので、ピークを合わせて、自分の完成形のジャンプをそろえたいです」

 そして昨季は鉄壁と思われたロシア女子は、たった1年で様相が変わってきた。まず昨季に世界大会の表彰台を席巻した3人のうち2人が、エテリ・トゥトベリゼ門下からエフゲニー・プルシェンコ門下へと移った。

 移籍したアリョーナ・コストルナヤ(17)はトリプルアクセルが不調となり、コロナ感染後の回復が遅れ、世界選手権の代表落ち。今月、古巣に戻った。

■4回転で驚異的な得点

 同じく移籍したアレクサンドラ・トルソワ(16)は、昨季は5種類の4回転に挑んだが、今季は種類を減らしミスを抑えようと試行錯誤中。怪我もあり、飛躍した姿は見せられていない。
 残留したアンナ・シェルバコワ(16)は好調を維持。ロシア選手権では4回転ルッツ、フリップともに成功し、264.10という驚異的な得点で優勝した。

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