ボディポジティブとは、「ありのままの体形や見た目を愛そう」という欧米を中心に始まったムーブメント。インスタグラムでは「#BoPo」というハッシュタグとともにボディポジティブに関連する写真が100万件以上投稿されている。
ジェンダー論などが専門の國學院大学の水無田気流教授は、ボディポジティブの潮流の背景をこう解説する。
「これまでメディアに映し出される『美しい女性像』は、標準よりかなり痩せているのが一般的でした。これが若い女性を中心に『痩せなければ』という観念を植え付け、摂食障害などの精神病理にも結びついている点はたびたび指摘されてきました」
2006年にはハイファッションモデル2人が摂食障害で亡くなる事件も起き、欧米諸国ではBMI(体重と身長から肥満度を表す指数)が一定基準以下のモデルは起用を禁止するなど制限を設けるようになった。
「こうした経緯も踏まえ、『美しい女性像=痩せ形』という定型イメージで狭く押し込めようという既存のあり方に対し、批判的な見地から身体像の解放をうたったのがボディポジティブ・ムーブメントです」(水無田さん)
■五輪憲章にも違反する
00年代半ばごろから起用されているプラスサイズモデル(平均より大きな身体のモデル)が、よりポジティブなイメージとして認知されるようになったのもムーブメントの効果の一つだ。14年にSサイズから6Lサイズまで展開するファッションブランドを立ち上げた渡辺さんは、まさに日本におけるボディポジティブの先駆者なのだ。
高級ブランドのコレクションでは、ジェンダーレスやノンバイナリーと呼ばれる性差にとらわれない美が注目されている。こうしたトレンドとともに、体形や障害など容姿による不当な差別(ルッキズム)への批判的見地を脱して、「どのような肌色、体形、身体的特徴も美しい」とする「美の多様性(ダイバーシティー)」が称揚されるようになっている。
「渡辺直美さんはこのようなムーブメントの中、アメリカで活躍しアーティストビザを取得することができました。タレントとしての実力や実績はもとより、インフルエンサーとしての知名度も高い、国際的に活躍する人です」(同)