「被害者や家族が少しでも安心できるよう支援したい」(市担当者)
前述の諸澤さんは、被害者支援を理解する上で最も大事な点は、被害者問題は「権利」の問題であり、人権を侵害された被害者に対し国や社会が何をすべきかだと話す。
「被害者になったということは、憲法第13条の『個人の尊厳の尊重』、第25条で保障された『生存権』が侵害されたことを意味します。したがって、被害者への支援は、国と地方公共団体の責務。全ての自治体に条例が必要です」
また、国際的な考えとして、「迅速」「公正」「無償」「使用しやすい」──この4条件を満たさないものは「支援」と言わないという。
「例えば、大けがをした時の救急活動が一刻を争うということについて多くの人が理解しています。しかし、心の傷が身体の傷と同じように一刻を争うということについては、日本ではあまり知られていません」(諸澤さん)
世界最大級の被害者援助組織、米国のNOVA(ノヴァ、全米被害者援助機構)は、事件の第1報を受けると2人1組のレスポンスチームを派遣し、3日間72時間支援を行う。「危機介入」と言われ家事、育児、医療、介護、子どもの世話、引っ越し、職場復帰など、被害者支援活動の基本中の基本だ。だが、日本にはこのような危機介入を行っている組織がほとんどない。諸澤さんは、日本にも同様の体制をつくり、全国の市区町村すべて同じような支援を受けられることが重要と話す。
「そのためには、国が応分の負担をする必要があり、そうすることで、被害者が住民でない場合も、事件のあった自治体の予算で支援を行うことに、住民の理解も得やすくなります」
先の小沢さんは教育の必要性を説く。
「誰もが事件の瞬間まで被害者になることは考えていないと思います。しかし、誰もが被害者になる可能性があります。そうであるなら、被害に遭わないためにはどうすればいいか、被害者になった場合、どのような支援があるのか、子どものころから早期教育に取り入れて学んでおくことが大切です」