04年、犯罪被害者等基本法が成立し、被害者支援を「自治体の責務」と定めた。給付金や住居など生活を支えるための施策を講じるよう求め、基本法を反映した条例制定の動きが全国に広がった。だが、行政による支援の差が出ている。警察庁の犯罪被害者白書によると、犯罪被害者等の支援を主な目的にした条例があるのは、都道府県では21で全体の44.6%、政令指定都市では7で全体の35%、市区町村で326と18.9%に過ぎない(昨年4月1日現在)。
問題が浮き彫りになったのが19年7月、36人が死亡し33人が重軽傷を負った「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)で起きた放火殺人事件だ。
■自治体によって支援に差 欧米より20~40年遅れ
京アニには全国から人材が集まっていた。しかし、自治体によって支援に差があり、支援を受けられる遺族とそうでない遺族が出た。
京都市は11年に「犯罪被害者等支援条例」を制定。遺族・被害者に当座の生活資金として30万円を給付する制度がある。市によれば、京アニ事件による給付件数は、3月末時点で7件。
だが、犠牲になった男性社員(当時23)の遺族が住んでいた静岡県菊川市には条例がなく、遺族は見舞金を受け取ることができなかった。
被害者支援の第一人者で、常磐大学元学長の諸澤英道さん(被害者学)は、日本の被害者支援は欧米と比べ20~40年遅れていると指摘する。
「特に、被害者が集団で発生した場合の対応ができていません。欧米では被害者支援は『被害者の住んでいる地域において』が大原則。しかし、日本では住んでいる地域以外で被害を受けた場合の支援態勢ができていません」
京アニ事件で言えば、遺族が住んでいる地域において支援態勢をつくらなければならない。しかし、京都からその先、「遺族が住んでいる町」への連携ができていなかったという。
条例がなかった菊川市は事件があった翌8月、市長が条例制定の意向を示し、約8カ月後の昨年4月に条例が施行された。死亡者の遺族に見舞金として30万円、1カ月以上のけがを負った場合は5万円を支給する。