夏の食卓の定番、冷ややっこ。薬味にしようと、久しぶりに開けたカツオブシが妙に白っぽい。あれっ、カビ? よくよく見てみると、表面を無数の白い粉がはいずりまわっていた──。
封を開けたカツオブシを長期間にわたって放置すると、そんな悪夢のような光景にぶつかるかもしれない。この白い物体の正体はコナダニだ。
「コナダニは家庭内にもいるダニで、カツオブシやドライフルーツ、みそなどの食品をエサに繁殖します。気持ち悪いかもしれませんが、実際には、摂取してもアレルギー症状など人体への被害をひき起こす例はあまり多くありません。アレルギーの主な要因となるのはカーペットや布団などに生息するヒョウヒダニです」
そう話すのは家庭用殺虫剤を扱う「アース製薬」商品企画部の貞森邦生さんだ。
ヒョウヒダニは本来、食品中ではあまり繁殖しないと言われていたのだが、1990年代頃から食品を通した健康被害が報告されるようになってきた。
2012年4月、賞味期限を2年以上過ぎたお好み焼き粉を調理して食べた女の子とその母親に、ぜんそくやじんましんなどのアレルギー症状が起きたケースが報告され、話題を呼んだが、この時も原因となったのはヒョウヒダニだった。日本環境衛生センター環境生物部の橋本知幸さんは語る。
「ヒョウヒダニはコナダニよりもやや乾燥した環境を好むため、昔は、食品で増えるという例はあまりなかった。ところが、最近では、お好み焼き粉やたこ焼き粉といったミックス粉など、比較的乾燥していて、エサとなる脂質やたんぱく質を多く含んだ食品が利用されることが多くなり、生息場所が広がっているのでしょう」
一般的には、ハウスダストやダニアレルギーがなければ、摂取してもすぐにアレルギーを起こすことはないというが、
「自覚はなくても抗体を持っていることもある。一度に多量のダニを口から取り込んだ場合、今までダニに対して症状が出ていなかった人でも、症状を起こす可能性があります」(橋本さん)
対策としては、開封したらすぐに使い切ること。しばらく保存する場合には、ダニの活動が鈍くなる低温環境下、冷蔵庫に密閉して入れるのが望ましいという。
※AERA 2013年6月3日号