「組織の中で『長』がつくような役職を務めた人は特に特権意識が強くなり、自分は特別な人間だから普通の人には許されないことでも許されると思いがち。その意識は『自分は正しい』症候群を悪化させやすい」(片田氏)

 支配欲求が強くなり、思いどおりにならないとすぐに怒りだしたり、人を排除したり攻撃したりするのも特徴だという。

 実は、こうした“変化”には加齢に伴う脳や身体の機能の衰えも影響している。眼科医としてのべ10万人以上の高齢者と接してきた医学博士の平松類氏はこう解説する。

「お店や病院などで少しの時間も待てずにクレームをつけてしまうことはありませんか。それは認知能力や視覚や聴覚が若いころより衰えているからかもしれません。人間は年齢によって時間の感じ方が違うので、若いときには何でもない待ち時間でも長く待たされたと思ってしまうのです」

 たとえば「1分経ったと思ったらボタンを押す」という北海道大学の高齢者の時間感覚に関する研究で、20代は平均して61秒とほぼちょうどでボタンを押したのに対し、70代は32秒という結果だった。つまり、同じ待ち時間でも高齢者は2倍も長く感じるのだ。

 視覚についても、若い人なら平気で読める文字の大きさでも高齢者には読みづらく、イライラしてしまうことはよくあるという。聴覚や記憶力も同様だ。

「高い声は高齢者にとって聞きづらい音域で、人が注意するときの声は音域が高く耳に入りにくい。さらに記憶力の低下で、新しい情報を見聞きしても脳に定着しにくい。その結果、『この人は周囲の声に耳を傾けない』『都合のいいことだけを聞いている』と言われてしまうのです」(平松氏)

 精神科医の和田秀樹氏は、「老害」に陥った人が感情的になりがちな原因をこう話す。

「感情をつかさどる前頭葉の機能が加齢とともに衰えることで、怒りなどを抑制することが難しくなる。普段は温厚でも、何かの拍子にスイッチが入るとブレーキが利かなくなり衝動的になります。他にも、頑固だった人がより頑固になるなど、元から持っていた性格が極端になる傾向もあります」

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