コロナ前は、通勤時にコーヒーと一緒に朝食用として購入した人が多かったのだろう。通勤から巣ごもりに行動パターンが変化したことで、それがランチや軽食用に代わったわけだ。商品の魅力は、パッケージの上からつかんで食べやすいことと、全粒粉パンや高たんぱくのチキンを使ったヘルシーさにある。
ヘルシーという観点では、「たんぱく質10g豆腐バー和風だし」にもファンがついており、セブンの担当者は「価格的にも、たとえばおにぎりの代替としての食べ方を提案している」という。
暮らしに密着したコンビニの非接触フードは、衛生面プラス、健康管理というコロナ禍のニーズを、いかに反映して具現化するかがヒットする鍵になっているようだ。
■家飲みニーズでおつまみ系が売上アップ
さらに夜の食生活の変化も、新たな消費行動につながっている。
「外出自粛で家飲み需要が増えており、お酒との買い合わせとして、ワンハンドで食べられるおつまみの売り上げが伸びています」
こう話すのはファミリーマート(以下ファミマ)の広報担当者だ。
ファミマはこの3月から順次、家飲み需要の増加を受けて、スティック状の「グリルチキン」をはじめ、「タン」や「冷やし胡瓜一本漬」「おつまみかまぼこ」といった、ワンハンドで食べやすい総菜商品をぶら下げて陳列する独自の売り場を広げてきた。売り上げは前年比で1.5倍になったという。
ワンハンド系商品の中で人気No.1は、「グリルチキン ブラックペッパー」。No.2は「グリルチキンゆず七味風味」。どちらも鶏むね肉を使ったピリッとした風味が、おつまみにぴったりだ。また、片手で食べられる非接触フードは、「スマホを見ながら、パソコンに向かいながら、といった“ながら”ニーズにも対応できるので、外出自粛生活の中で幅広くご利用いただいているのではないか」と、担当者はみる。
そもそもコンビニには昔から非接触フードが多い。それは、業界全体に「ワンハンドで食べやすい」ことをウリにする、独特の商品文化があるからだ。
忙しいコンビニユーザーは、外出時や車の中で手軽に食べたいという“即食ニーズ”が高い。そのニーズに応えるため、各社競ってオリジナル商品を開発してきた歴史がある。
例えば、約40年も前の1983年にはセブンのワンハンドフード・「ブリトー」が発売されているし、食べやすさを提案したローソンの「からあげクン」も1986年生まれだ。レジ横のケースに並ぶ「アメリカンドッグ」「フランクフルト」「焼きとり」といった“串モノ”も、ワンハンドフードとしてロングセラーに育っている。それがいま、コロナで「非接触フード」へと商品価値がアップし、改めて多くの消費者から支持されているというわけだ。
当分続くであろう、我慢の巣ごもり生活。コンビニ発の非接触フード、その進化に注目したい。
(コンビニジャーナリスト・吉岡秀子)