大丈夫? と思わず心配になる。そうした漫画を見ていると、これはどこの話かとやはり違和感がある。

 その隣にある記事が、コロナによる重症者や死亡者を報じていたりすると、余計に皮肉である。

 日本でも地方によっては感染者ゼロだったり、少数だったりする場所もあるとはいえ、東京や特に大阪を中心とする大都市圏に住んでいると、神経過敏になっているせいかもしれないが、こういう時だからこそ、言葉や演出にはより注意を払うべきだと思う。

 だからといって、自粛警察のようにすぐ人に言いつけるという習慣はいただけない。

 たまに仕事の打ち合わせで二、三人で入ったカフェなどで、人の噂がいやでも耳に入ってくることがある。

 ほどよく恐れることがいかに難しいか試されている気がする。

 日に日に緑が色濃くなってきた。重なり合った樹々が騒がしい。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『人間の品性』ほか多数

週刊朝日  2021年5月7-14日合併号

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下重暁子

下重暁子

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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