国内でもワクチン接種が始まり、新型コロナウイルスの収束に期待がかかるなか、生物学者の池田清彦さんはワクチン接種が広まっても、収束できない可能性を指摘する。
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僕は様子を見てからワクチン接種するかしないかを決めたい。その理由は、感染させるリスクが高い人から接種したほうがいいと思っているから。
僕なんかは外出も控えているし、感染させるリスクはほとんどない。多くの国民が接種を終えている英国やイスラエルでは感染率が急激に下がっているから、ワクチンが効くのは確かだと思う。
副反応の面でもアナフィラキシーが出る人はいるが、その割合は非常に少ない。60代の人がくも膜下出血になったというけれど、ワクチンとの因果関係は不明です。
日本では4月から高齢者への接種が始まりましたが、65歳人口16万人の八王子市ではわずか2千人分だけ。ワクチン接種の目的は集団的な免疫力をつけるという社会的なものですから、一部の高齢者だけに接種しても達成できません。
それならば、ワクチン供給が十分になるまでは、若い人や他人にうつすリスクの高い人から打つほうがいい。社会活動が少ない年寄りはあと2カ月我慢して、先に感染させるリスクが高い人にワクチンを打ったほうが全体的には早く収束に向かうはずだからです。
問題は、誰が感染させるリスクが高いかをどう判断するかだね。正確な区分けはできないかもしれないけど、国がリーダーシップをもってやってほしいね。この時期にオリンピックみたいなバカなことにお金を使うのではなく、ワクチンに投資してほしいですね。
感染対策としてのワクチン接種は素早くまとめてやらないとダメ。今みたいに五月雨式にやってもダメだよ。ワクチンの効果って1年続かないことがある。
そうだとすると、今ワクチン接種した人の効果が切れるころになっても、まだ収束してないという事態になりうる。そうしたらまたワクチン打たなきゃならなくなって、永遠に終わらない。打つならど~んといっぺんにやらないとダメですよ。
(構成/本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2021年5月7-14日号