
けた違いの強さだ。「日本のプロ野球に、ひとりだけ現役メジャーリーガーがいるようなもの」と話すベテランプロゴルファーもいる。
今年4月のプロデビュー以来、日本男子ゴルフ界を席巻する松山英樹(21、東北福祉大学4年)のことである。
開幕戦こそ10位タイに終わったものの、2戦目で新人選手として1999年の日本ゴルフツアー機構発足後では最速となる優勝を飾ると、6月に入ってダイヤモンドカップで2勝目を挙げた。5戦2勝。敗れたトーナメントでも2大会で2位に入るなど安定感は際立ち、国内賞金ランクはトップを独走。全米&全英オープンの出場権も予選会を勝ち抜き獲得した。
ダイヤモンドカップで、松山と優勝を争った中嶋常幸(58)はいう。
「“短気は損気”という言葉があるけど、彼はその真逆を行く。根気強く粘り強さがあって、むちゃをせず、できることをしっかりやっている。決して勢いだけで戦っていない。毎週優勝争いしているという事実がゴルフの質の高さを証明している」
タイトルを総なめにしていたアマ時代から、松山は常に同学年の石川遼と比較されてきた。石川は会見などで、自身が掲げる目標やいま取り組んでいる課題などをはっきり口にする。一方の松山は、興味のない話題には無愛想な物言いに終始し、具体的な目標を公言しない。有言実行タイプの石川に対し、不言実行タイプが松山だろう。
松山は石川に関する質問に嫌悪感を示したりもするが、開幕戦直前に行ったインタビューでは、強烈なライバル心を口にしていた。
「プロになったことで、少しは近づいたかなとは思うけど、追いついたとは思えません。ようやくプロになったと思ったら、遼は(今年から)アメリカですから。遼より早くアメリカのメジャーを勝ちたい。それができたら、遼を超えたと思えるんじゃないすかね」
※AERA 2013年6月17日号