脳動脈瘤の主な治療法は2種類ある。頭の一部を切り開いて脳動脈瘤に直接クリップをかける開頭手術だ。クリップで血流を遮断すると瘤はしぼむため根治性が高く、再発のリスクは低い。ただし、頭を切っておこなう手術のため、からだへの負担は大きくなる。
もう一つは、足の付け根からカテーテルを入れて脳動脈瘤の部位まで到達させ、瘤の中に金属性のコイルを詰める脳血管内治療だ。頭を切らないためからだへの負担は少ないが、瘤に血流が再び流れこむことで、再度治療が必要になる可能性が数パーセントある。
開頭手術と脳血管内治療を比較すると、昔は開頭手術が主流だったが、血管内治療のほうが治療成績がよいというデータが海外で報告されたことで、2000年以降は脳血管内治療の治療数も増加している。
19年の同院の実績は、開頭手術が149件、血管内治療が204件だ。治療法について富永医師は次のように語る。
「開頭手術か脳血管内治療のどちらを選ぶかは適応条件がありますが、ファーストチョイスはできる限り脳血管内治療にしています。確実に治る可能性があるのであれば、患者さんの負担が少ないに越したことはありません」
本誌では、治療数の内訳として脳動脈瘤の破裂、未破裂の治療数も掲載している。未破裂の脳動脈瘤は必ずしも治療が必要なわけではない。脳ドックで未破裂の脳動脈瘤が発見された場合、瘤の大きさ、形状、発症部位などを精査して、破裂するリスクと治療に伴うリスクを考慮して、治療の有無が決められる。
同院の19年実績は、開頭手術の破裂が22例、未破裂が127例、脳血管内治療の破裂が29例、未破裂が175例だった。
脳動脈瘤が破裂した場合は一刻を争うため、破裂の治療数が多い病院は、緊急時の対応が豊富ということになる。一方、未破裂の数字が多い病院は、地域の開業医や病院から紹介される患者数が多いことを示す。破裂、未破裂の割合はどう変化してきたのだろうか?