もう一つの可能性は、今国会最大の汚点となった国民投票法改正法成立のために汗をかいてくれた安住氏や枝野氏対して、取引材料として、自民側が、党首討論をかなり前から約束していたということだ。いずれにしても、見返りなしに党首討論に自民が応じるはずはないということだけは確かだ。

 取引がすべて悪いというわけではない。必要な取引もある。ただし、その取引は意味のあるものでなければならない。では、今回の取引はどんな意味があるのか。

 党首討論で、菅総理を追い詰めれば、内閣支持率を20%台まで落とすことは可能かもしれない。内閣不信任案を野党が提出しても簡単に否決されるだろうが、それでも、不安に駆られた自民党内に菅降ろしの風が吹き荒れて、各派閥の足の引っ張り合いが始まれば面白くなる。特に菅・二階陣営と安倍再々登板まで目論む安倍・麻生連合の争いが激化すれば、安倍氏牽制のために、河合・森友両事件の真相を暴露するという菅氏側の動きが出るかもしれない。

 自力では戦えないので、野党側が敵陣内の混乱を狙ったのだとすれば、高等戦術として褒めてもいいだろう。そうなるかどうか。まずは党首討論を見てみようではないか。

週刊朝日  2021年6月11日号

[AERA最新号はこちら]