「自分には世界を変える力がある」と、子どもの頃から信じてきた(写真=高野楓菜)
「自分には世界を変える力がある」と、子どもの頃から信じてきた(写真=高野楓菜)
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 Schoo代表取締役社長CEO、森健志郎。「リスキリング」や「学び直し」が叫ばれている中、コロナ禍のオンライン学習普及の追い風を受け、スクーは存在感を増している。オンラインだが、一方通行ではない、インタラクティブな授業を提供する。このスタートアップを立ち上げたのが森健志郎だ。最初は生放送の配信にも苦戦した。あめ玉で3日しのいだこともある。壮大な夢の実現に向けて、一歩ずつ足場を固めていく。

【写真】週末に草野球を楽しむ森さん

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 渋谷の街並みを一望するビルの屋上に立つと、まるで風の一部になったかのようにその姿が溶け込んだ。

 彼の印象を「飄々(ひょうひょう)としている」と表現する人は多い。私もそう感じていた。どこかつかみどころのない軽さをまとわせている。しかし、取材を重ねるにつれ、向かい風に表情変えず立ち続ける姿そのものが、彼の本質なのだと知った。

 社会人向けオンライン学習サービスで急成長するSchoo(スクー)。11年前に24歳だった森健志郎(もりけんしろう)(36)が立ち上げ、現在の会員登録数は約80万人、法人導入企業数は2700社を超える。

 特にこの3年での成長は目覚ましく、2021年から高等教育機関向けDX推進支援(のべ30校)や地方自治体と連携してのデジタル学習支援(27自治体)の事業にも力を入れている。「school」の「l」をとって付けた社名には、「世の中から卒業をなくす」という思いが込められている。学校を卒業した後も学び続ける社会の実現を謳(うた)ったのが、出発点。「学歴ではなく学習歴を」と、すでに9年前にメディアの取材で語っていた。

 ウェブサイト上に公開されている授業は、計7千以上。会計資料の読み方や初心者向けデザイン入門など、多彩なジャンルの生放送授業を何度でも無料で受けることができ、過去の人気授業など録画での受講は有料となるモデルだ。

 数多あるオンライン学習サービスの中でスクーの特徴は、「みんなで」学ぶ賑(にぎ)わいを感じられる設計だ。例えば、生放送授業に参加してすぐに多くの会員が押す「着席ボタン」。チャット欄に「着席しました!」というコメントがずらりと並ぶ。授業中に絶え間なくコメントが投稿され、活気のある教室のような雰囲気に。この賑わいこそが、創業時から一貫した森のこだわりだ。

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