冒頭のアヤコさんは、20代のころの経験を思い出しながら、こう語った。
「“あのとき、あんなことがあって複雑な思いでした”と言うこと自体、とても勇気がいることだから、20代の私は誰にも言えなかった。ですが今は現場で働いている人が違和感を感じたり、おかしいと思うことがあれば、声を上げたり信頼できる人に相談してほしいと願います」
あのときいろいろと思うことはあったが、仕事にやりがいを見いだし、利用者らとの信頼関係を築きながら、長年にわたって看護師の仕事を続けることができた。振り返ると、「人の役に立てる仕事だし、続けてきてよかったと思う」とほほ笑む。
「後に続く人のためにも、今現場で働いている人、あるいは今後働く人が、ため込まずに声を上げられる環境になってほしい。そのためにも、ハラスメント意識が業界や利用者側に浸透し、変わっていくことを願っています」
(フリーランス記者・松岡かすみ)
※週刊朝日 2022年12月9日号