前出の山下院長は、「ビギナーズラックは、ギャンブル依存症のきっかけになりやすい」と言い、こう解説する。

競馬の借金を返すためと、サラ金などでお金を借りてまで馬券を買う人がいますが、ギャンブルで『取り返すために』と思ってやっている時点で病気です。なぜならギャンブル依存症の方は、『取り返せないかも』『負けたら終わる』という興奮も求めてやっているからです」

 山下院長によると、ギャンブル依存症も、アルコールと同じくドーパミンが関連しているという。

 競馬で自分が賭けた馬がゴールする瞬間以上に、なけなしのお金を賭ける行為でドーパミンが分泌されて高揚感を感じ、次も馬券を買いたくなる。しかし、耐性によってドーパミンが出づらくなるため、より賭けてはいけないお金を投じるようになっていく──ビギナーズラックによる「成功体験」が、身を持ち崩すまで続くギャンブル地獄の引き金になってしまうのである。パチンコやパチスロの場合も同じだが、これらは画像や音響を使った演出で、負けていても勝っているかのような錯覚を起こさせ、脳内の報酬系をより活発にするというから厄介だ。

 行為依存症の中には、万引きや盗撮などといった犯罪行為に依存してしまうパターンもある。山下院長が診てきた患者の中には、普段は温厚な産婦人科医なのにもかかわらず、盗撮の常習犯だった男性もいるという。

「この男性の場合、女性の裸を見ることへの欲求ではなく、『撮ってはいけないものを撮りたい』という『行為』に依存していた。盗撮や痴漢などの犯罪行為に依存してしまうのは、そうした『チャレンジ』によってドーパミンが分泌されていると考えられます」

 依存症になるメカニズムはだいぶわかってきたが、それでは、依存症になりやすい性格の傾向などはあるのだろうか。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長で、薬物依存症センターの松本俊彦センター長はこう語る。

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