元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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朝起きたらほぼ1週間ぶりに青空! たったそれだけで嬉しい。楽があるのは苦あればこそだネ(写真:本人提供)
朝起きたらほぼ1週間ぶりに青空! たったそれだけで嬉しい。楽があるのは苦あればこそだネ(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 いわゆる「健康オタク」にも様々なタイプがあるので、一括りにされると大いに抵抗を感じるが、ま、一括りにしてしまえば私は間違いなくその部類に違いない。

 若い頃は真逆。グルメ(この言葉も古いね)に夜遊び(たいした事しとらんが)にとやりたい放題。それこそがキラキラした人生だと思っていた。思い返せば、転機はスポーツクラブで体験したヨガだったかと。当時は流行の先端でおしゃれで新しくて、ミーハーの私はたちまちハマる。で、ヨガって体が軽くないとポーズが決まらないのよ。なので食を軽くし、無駄に早起きをするようになった。それが習慣になると、人生最大の快感とは何より健康でいることなんだってことに初めて気がついた。っていうかそれまでのキラキラ人生がいかに毎日めちゃくちゃ体調が悪かったかってことに気づいたのだった。朝は起きられないし二日酔いで胸がムカつき顔はむくみまくり。人生ってそんなもんと思っていたが、単に自ら人生の貴重な時間の大半をどんよりさせていたのだった。

 以来、日の出とともに起き、食事は午後6時までに終えることを基本に、早寝早起き、健康的な食事、適度な運動という健康の王道まっしぐら。ずっと頼ってきた薬ともサプリとも無縁となる。健康とは情報やお金で手に入れるものではなく、日々の生活習慣により自分でコツコツ作っていけるという事実は、私の人生を太く明るく支えている。それはコロナの時代においても同じである。いま医療崩壊で「自分の身は自分で守る段階」とのことだが、私にとってはそれは段階でなく習慣なのだ。なのでこれまでと同じ暮らしを粛々と営むのみである。

 結局、健康を守るには二つの方法があるのだと思う。(1)自分で自分の体を大切にする (2)もしもの時に医療に頼る。この両輪で我らの健康は保たれてきた。でも医療の発達とともに我らは(1)をないがしろにしていたのではないか。(2)が頼れなくなってきた今こそ(1)を見直す時ではないか。それは悲劇ではなく好機だとオタクは思うのだがどうだろう。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

AERA 2021年8月30日号