

新型コロナウイルスの感染拡大もあり、旅先などで休暇を楽しみながら働く「ワーケーション」が注目だ。学校や鉄道、さらには動物園と働く場所やシチュエーションも広がりを見せている。ユニークな現場を訪ねた。
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JR立川駅から青梅線で約1時間。川井駅で下車し、奥多摩大橋を横目に15分ほど歩くと「奥多摩町立古里(こり)中学校」の看板が見えてくる。2015年に閉校となった後、文部科学省の廃校活用プロジェクトで人材育成を手がける会社「JELLYFISH(ジェリーフィッシュ)」の企画案が採択され、昨年1月からワーケーション施設「OKUTAMA+」としてリニューアルした。
旧校舎は3階建て。人体模型のある理科室、作曲家の肖像画が掲げられた音楽室など、そこかしこに学校の面影が残る。建物内にドミトリーがあり(1泊5千円から)、多国籍料理を提供するカフェレストランも近くオープンする。日帰りの場合、基本使用料は2千円。
東京都立川市から施設を訪れた会社員の男性(33)は「自宅周辺よりも緑が多く、癒やされました。廊下の足音など適度な緊張感があるのも良かったです」と話す。
スタッフの久保田博さん(49)は古里中の卒業生。今は都心のIT企業に勤め、副業として週5日施設に関わる。一昨年、新規事業の部署に異動となり、地域活性につながる事業を起こせないかと考え、候補地の一つとしてふるさとを訪れた。
「かつて住んでいた地域の付近は物音ひとつなく、父親が勤めていた会社の工場も閉鎖されていた。衝撃を受けました」
その後、知り合いに誘われ、オープン間もないここを訪れた。生まれ変わった学校の姿に驚くとともに、「不用品置き場になっている部屋も整えれば、さらに素晴らしい施設となるのでは」と思案。施設の運営責任者、鈴木海斗さん(22)に手伝いを申し出て、スタッフの一員に加わった。
「日々自然に接していると、人間界の出来事もささいに感じられてくる。ここは誰にとっても自然体に戻れる場所だと思います」(久保田さん)