JR東京駅から外房線特急わかしおに乗って1時間半。大原駅の構内に、手描きのイラストが描かれた売店がある。全14駅、26.8キロの区間を走るローカル線「いすみ鉄道」が、ワーケーションを支援する事業者などと運行する「ワッペン・ワーケーション列車」の出発点だ。料金は平日が2千円、土日が2300円。

 購入したワッペンが証明書代わりとなり、好きな時刻の電車に乗り、好きな座席で作業ができる。車両だけでなく、駅構内での作業も可能。見回すと、写真撮影にいそしむ「撮り鉄」も多い。思い思いの時間が流れ、気兼ねせず自分の仕事ができる。

「いすみ鉄道は単なる移動手段を超え、乗ることを楽しんでもらう列車。自由度が高い分、うまく空間を活用してほしい」と話すのは、6月まで同社の営業課長だった齋藤麻由美さん(33)。昨年4月、コロナ禍で利用者が激減するなか、ワーケーション列車のプランが浮かんだ。かつて旧国鉄で指定席券代わりにワッペンを配っていた話を聞き、再現を思いついた。

 齋藤さんは「特別な景勝地も夜景スポットもありませんが、外の景色に目を奪われずに済む分、作業に専念しやすいと思います」と話す。

 八ケ岳山麓にあり、避暑地として人気の小淵沢(山梨県北杜市)。飲食店や土産物店が軒を連ねる「ピーマン通り」の中央に並ぶのが、「星野リゾート リゾナーレ八ケ岳」が手がける「テレワークゴンドラ」だ。

 同社が運営する福島県のスキー場で使われていたもので計3台。稼働はしていない。約2畳の室内に、パソコンと資料を両方広げられる大きさのデスクとソファ、コンセント、Wi-Fiを完備。小窓や冷風機、換気扇もあり、換気や温度調節もばっちりだ。個室でアイデアをじっくり整理するのに向いている。

 宿泊者が無料で使える。予約制だが、当日に空きがあればその場で予約も入れられる。

■キリンやゾウをバックに会議も

 コロナの感染が広がり始めた昨年3月以降、施設の一部をコワーキングスペースとして開放する中で、個室の需要を感じたという。ゴンドラを使うのは同社の星野佳路代表のアイデア。昨年11月にサービスを始めて以来、コンスタントに予約があるという。総支配人の北嶋文雄さん(42)は、「ゴンドラで仕事するお父様やお母様を終わりがけにお子さんが迎えに来て、ご家族でお出かけされるシーンをしばしば目にします」と語る。

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