OniGOの商圏は店から1~2キロ。ライダーが商品を受け取ると、電動アシスト自転車に乗って注文先に届ける(撮影/工藤隆太郎)
OniGOの商圏は店から1~2キロ。ライダーが商品を受け取ると、電動アシスト自転車に乗って注文先に届ける(撮影/工藤隆太郎)

■商圏は半径1~2キロ

 お客が初回登録と決済を終えたのは「12時8分25秒」。それと同時に、ライダーが配達に出る。お客のアプリには、ライダーの名前と、「今から商品をお届けします」というチャットのメッセージが流れる。

 配達先は店から約1キロ離れたマンション。ライダーが玄関前に到着すると店に通知する。時刻は「午後12時15分47秒」。支払い手続きの完了から到着まで7分強。10分以内でミッション完了というわけだ。

 この日の都心は最高気温36度の猛暑だった。だが、配達から戻った男性は額に汗も浮かばせず、「戻りました」と元気な声を店内に響かせた。

「即配」のカバー範囲は店から半径1~2キロ。10分以内に自転車で配達できるエリアを実際の交通状況に応じて設定した。1号店の販売対象は約5万世帯。世帯年収が比較的高く、子育て中の家庭が主なターゲットだ。坂道が少ないことも適地と判断する理由の一つになった。

 OniGOの最高経営責任者(CEO)を務める梅下直也さん(44)は「これだけ狭いエリアに住宅が密集している街は世界でも稀有(けう)です。首都圏は商圏として優位性があると見込んでいます」と自信を見せる。

 OniGOのビジネスモデルは「ダークストア」といい、お客を店に入れないことから「表に見えない店」という意味がある。コロナ禍の欧米や中国で急速に広まりつつある新業態だ。OniGOは、商品のピックアップや在庫管理、注文や配達のシステムをすべて自社で開発した。梅下さんは言う。

「コロナ禍以降、フードデリバリーが一般化し、ネットスーパーの市場が拡大している今は食品通販の潮目と考えています」

 シンクタンク「矢野経済研究所」の調べでは、2020年度の食品通販の市場規模は4兆円超の見通し。OniGOは、とりわけ即配ビジネスが急速に伸びるとみており、25年には2兆円規模に膨らむと予測する。「国内初の即配ビジネスの専業事業者として、リーディング会社になることを目指しています」(梅下さん)

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