第三子が生まれて8カ月経った春の初め、我が家は東京都杉並区から長野県松本市へ引っ越してきました。引っ越しの理由をひと言で表すと、「子どもをのびのび育てたいから」に尽きます。東京にも楽しいことは色々ありましたが、夫婦ともに地方育ち、特に実家が長野にある私にとっては、長野で子どもを育てるほうがずっと自然なことに思えたのです。
越してきてからまた8カ月が経ちましたが、今のところ長野生活には大満足です。日々姿を変える山々は見飽きることがないし、地場産の野菜や果物が安くておいしいし。そして、当初の目的だった「子どもをのびのび育てたい」も実現できている気がします。
でも、子どもをのびのび育てるって具体的にどういうことだろう。子連れ移住について調べだすと必ずぶつかるキーワードだし、みんなが使っている表現なので人に引っ越しの理由を訊かれたときは自分もつい「子どもをのびのび育てたいから」と答えてしまうのですが、そのたびに(のびのびってなによ、パンツのゴムかよ)と心の中でつっこんでいたのです。
越してきて8カ月経ち、ようやく「のびのび」を自分なりに説明できる言葉を見つけました。それは、地方には「ま、いっか」の精神がある、というものです。長野県の中でも松本市は人口も多いしお洒落な街なので(ちなみに私自身は松本出身ではありません)、「田舎ぐらし」のような言葉はあまり似合いません。それでも、東京にはない地方のよさがある。それが、私なりに表現すると「ま、いっか」の精神なのです。
たとえば、近所のコンビニにて。子どもと散歩がてら毎週立ち寄る店舗で、店員さんとも顔見知りです。そこで「新発売のこのお茶を今買うと、来週から使えるチョコレート無料引換券を差し上げます」なるキャンペーンをやっている。チョコレート引換券かあ、たぶん来週までになくすだろうなあ、などと考えながら、それでも新発売のお茶をレジに持って行く。すると顔見知りの店員さんが言うのです。「チョコレート、今日持ってく?」と。