ところが、打球は後方のライン際に立っていた村田一塁塁審の右足を直撃すると、大きくバウンドし、セカンド・山崎裕之の前に転がった。

 野球規則によれば、内野手を通過した打球がフェア地域で審判に当たった場合、審判は石コロと同じ解釈(イレギュラーバウンド)になる。直後、山崎は三塁に送球。打球が外野に抜けたと思い、すでに三塁を大きく回っていた田尾は、慌ててUターンしたが、タッチアウトになってしまった。

“幻の先制点”に泣いた中日は、1対3で敗れ、第6戦も4対9と連敗。28年ぶりの日本一を逃した。まさにシリーズの流れを変えた石コロだった。

 村田氏は二塁塁審を務めた第6戦でも、二塁のタッチプレーの際に山崎の落球を見落とし、一塁走者の平野にアウトを宣告。中日側の抗議で判定が覆ったものの、“石コロ事件”以来、自宅に怒ったファンから抗議の電話が相次ぎ、夫人が対応に苦慮したという。

 西日本新聞に13年11月8日から14年2月8日まで76回にわたって連載された回想録「オレが村田だ!」では、就寝中の夫を気遣った夫人が、夜中に目を覚まさないよう、電話機を座布団でぐるぐる巻きにした話も紹介されている。

 回想録によれば、村田氏はジャッジをする際に、無意識のうちにアウトやセーフのコールを何度もする癖があったという。

 選手や監督が抗議すると、「きさん(貴様)、出てくんな」などと九州弁で強気につっぱねたので、これらの言動が珍プレー番組の「俺は村田だ!」のセリフにアレンジされたという次第。

 そんな数々のパフォーマンスの中でも、ユーチューブでも話題になった事件が起きたのが、89年7月19日のダイエーvs近鉄だ。

 4対2とリードのダイエーは5回1死、山本和範が四球で出塁。次打者・伊藤寿文のときに二盗を試み、セーフになったが、捕手・山下和彦の送球が腹部を直撃したため、腹立ち紛れにボールを掴むと、地面に叩きつけた。

 すると、この行為にぶち切れた村田二塁塁審は、「こら、きさん、何をしよるか!」と怒りの形相で詰め寄ると、左手で山本の胸をバシッと突いた。

「審判を愚弄する行為だ」と息巻く村田塁審を前に、山本は明らかに自分に非があることなので、タジタジになるばかりだった。

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無礼な態度に怒った村田球審が…