厚生労働省が新型コロナウイルス患者32万2007人を対象に、コロナの重症化リスクと死亡率の関係を調べた調査で、最も高かったのは「慢性腎臓病(CKD)」であることがわかった。慢性腎臓病は国民の約10人に1人が発症、糖尿病に続く新たな国民病といわれている。多くの人が罹患している慢性腎臓病はひとごとではない。なぜこの病気でコロナにかかると重症化するのか、専門医に聞いた。
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厚生労働省が感染者情報を管理するシステム「HER-SYS」に登録された新型コロナウイルス患者32万2007人を対象に、コロナの重症化リスクと死亡率の関係を調べた結果、第1位は「慢性腎臓病(CKD)」(14.00%)だった(8月25日発表)。重症化リスクが何もない人の死亡率は0.41%だから、どれだけ高いかがわかる。
なぜ、この病気があるとコロナが重症化しやすいのか。それを説明する前に慢性腎臓病がどのような病気かを解説していこう。
慢性腎臓病はたんぱく尿があったり、腎機能(腎臓の働き)が慢性的に低下している病気の総称だ。
腎臓は毛細血管が毛糸玉のようにからまった糸球体が、腎臓ひとつに約100万個あり、常に大量の血液を濾過し、尿のもとを作る。
糸球体の濾過機能が低下すると老廃物や余分な水分がたまりやすくなる。むくみやだるさ、食欲不振が起こり、肺や心臓などに病気が起こってくるため、進行すると人工透析で腎臓に代わって体内の老廃物などを排出する必要がある。
慢性腎炎など、もともとの腎臓の病気に加えて、糖尿病をはじめ、高血圧や肥満・メタボリックシンドローム、加齢などが引き金になり発症し、かなり進行しても自覚症状がない点がやっかいだ。
患者数は約1300万人で国民の10人に1人が罹患していることになる。このため、糖尿病に続く新たな国民病といわれている。
この病気の専門家で、東京女子医科大学病院血液浄化療法科教授の土谷健医師は言う。
「コロナが重症化しやすいのは、慢性腎臓病の中等度~高度低下の患者さんです。慢性腎臓病の程度を表すのに、腎臓(糸球体)がどれだけ血液を濾過できているかを示す検査値であるeGFR(推算糸球体濾過量)という数値があります。90以上が正常で、少なくなるほど腎機能が低下していることを示しますが、進行度で言うとステージ3b(eGFRの数値が44以下)以降の人が相当します。慢性腎臓病の患者さんは自分がどのステージなのかをよく確認して、該当するステージの人はよりしっかり感染対策をすべきです」