日常生活で過剰なストレスを感じ、不安を抱える子どもが増えている。「勇者の旅」という不安軽減のための学校教育プログラムを考案した千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任講師の浦尾悠子さんに、子どもの不安と学校環境について聞いた。
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不安を感じやすい子は、生まれつき「不安になりやすい特性」を持っているケースがとても多いんですね。こうした特性に加え、「不安な子に対して優しくない学級環境」が、さらに不安を強める要因になっているように思います。不安をあまり感じない人は、不安が強い人の気持ちをなかなか想像することができませんから。
私たちが考案した「勇者の旅」は、不安症やうつ病などの精神疾患の治療に使われる認知行動療法の考え方を用いて不安な気持ちとのつきあい方や感情をコントロールする方法を身につけるプログラムですが、自分の気持ちだけでなくほかの人の気持ちにも気づいたり、理解したりできるような内容も盛り込んでいます。たとえば「同じ出来事に対して自分はそんなに不安だと思わないけれど、不安が強い子はこういうふうに感じるんだな」と学習した子は、「もう少し話し方に気をつけよう」「不安が強いときはこういうふうに声掛けしよう」などと行動を変えていくことができます。不安が強い子もそうでない子も一緒にプログラムを経験することで、からかいやいじめなどが減り、不安が生じにくい学級環境づくりにつながっていくことを期待しています。
■「えっ、この子、不安が強かったの……」と気づくケースも
「勇者の旅」は、指導する先生にもさまざまな効果をもたらしています。プログラムの前後に、子どもたちに不安についてアンケートをしていますが、先生がその結果を見て初めて「えっ、この子、不安が強かったの……」と気づくケースが少なくありません。不安が強い子というと教室を歩き回っているとか暴れるとか情緒不安定なイメージがあるかもしれませんが、実はリスクを冒したくないので、目立たないように発言しなかったり、失敗しないように細心の注意を払ったりしながら学校生活を送っています。先生からすると「おとなしい良い子」で、不安が強いということがわかりにくいんですね。