■節約で洋服を買えず
さらに問題なのが「正規の3分の1」ともいわれる低賃金だ。
はむねっとは今年4月から6月にかけて非正規公務員を対象にネットで「非正規公務員の実態」調査を実施し、その実態が明らかになった。有効回答は1252件あり、昨年の年収200万円未満の人が53%を占めた。そして全体の35%の人が「自分が主たる生計維持者(世帯主)」と答え、回答者の94%が「将来への不安」を感じていた。
西日本の地方都市の市役所の窓口で非正規職員として働く、シングルマザーの女性(40代)もそんな一人だ。
「家族が生きていくために十分な金額ではありません」
昨年6月まで民間企業で正社員として働いていたが、コロナ禍で職場が閉鎖。ハローワークで今の仕事を見つけた。収入は月6万円近く減った。週5日働き、手取りで月12万円程度。家賃6万円に食費、光熱費……。手元にほとんど残らない。
中学2年の娘には不自由をさせたくないと、自身の洋服は買わず、美容院は半年に1度。朝ご飯も食べず、1日2食にした。貯金はなく、コロナで失業した人らが借りられる「総合支援資金」を切り崩しながら暮らす。常に不安を抱え生きているという女性は、訴える。
「この給与で生きていっている人がいることを、国は知っているのでしょうか」
はむねっとの瀬山さんは、仕事への正当な評価と雇用年限の廃止の二つの対策が必要と説く。
「まず正規と非正規の格差をなくし、同一労働同一賃金を導入する。そして、民間企業では非正規労働者が5年働ければ無期雇用に切り替わりますが、公務員にも同様の仕組みを取り入れる。継続して質のいい公共サービスを実現するためには、働き手が安心して働ける環境が重要です」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年10月18日号