「世界に一つだけの花」を作曲した槇原敬之(C)朝日新聞社
「世界に一つだけの花」を作曲した槇原敬之(C)朝日新聞社

 ただ、作詞作曲をした槇原敬之は99年のクスリによる逮捕ですでに前科一犯だった。ちょっと勇気の要るコラボでもあっただろう。が、この作品のサウンドやメッセージはそういうものを超えて支持されることに。ちなみに、振り付けは小室ファミリー出身でのちに性別適合手術を受けたKABA.ちゃんが担当した。「誰もが特別なオンリーワン」というテーマは、ジェンダーフリー的な多様性も含んでおり、まさに時代を象徴したヒット曲といえる。

 こうしてSMAPは、ジャニーズ的なポップスとJポップの融合に成功し、音楽シーンの本流となった。この世界は後輩の嵐にも引き継がれていく。ではなぜ、SMAPがこれだけのことをできたかというと、その鍵はアイドルならではの華と上手すぎない歌唱力だ。

 じつはこの時期、自作自演で世に出たアーティストの作品をアイドル的な歌手やグループが歌うスタイルが流行した。つんくとモーニング娘。に、奥田民生とPAFFY、小室哲哉と鈴木あみ、などなど。これらはアーティストが作る難しそうな曲を身近に感じさせる効果を生んだ。人気者が上手すぎない歌唱力で歌うことで、親しみが持てるのだ。

 SMAPもまた、山崎やスガ、槇原による詞やサウンドを華やかにわかりやすく伝えることで、Jポップをより大衆的なものにした。これに対し、聖子は歌唱力も高く評価されたが、それを上回る武器がアイドルとしての華やわかりやすさだったのである。それゆえ、どちらも別格として、時代の本流を担えたのだろう。

 なお、SMAPについては、酒井政利が興味深い指摘をしている。09年に出版された「音楽誌が書かないJポップ批評59」のなかで、自身がプロデューサーとして手がけた百恵が活動の終盤「表現に取り憑かれすぎていた」としたうえで「SMAPにはそういう心配はいらない」と語ったのだ。

「国民的に支持される人というのは『超二流』なんですね。『超二流』というのは一流でいるよりもずっと難しいゾーン。そこにいま、唯一足を踏み入れているのがSMAPです。この超二流のゾーンこそが、国民が待望している本当の娯楽の世界なんです」

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米津玄師の作品を歌っていたかもしれない