表現者としての高みだけを目指すのではなく、ファンにとって身近な存在にとどまり続けることの尊さ。こうした機微を、彼らはよくわかっていた気がする。「世界に一つだけの花」のあとも、アイドルのまま、アーティストとのコラボを繰り広げた。斉藤和義に山口一郎、津野米咲、尾崎世界観、椎名林檎、そしてラストシングルは川谷絵音だ。
もし解散しなければ、嵐より先に米津玄師の作品も歌っていたかもしれない。
じつは今も、音楽シーンは大きな節目を迎えている。アニソンが日本レコード大賞に輝いたり、SNS発信のヒット曲が多数生まれるなど、多種多様なものが展開されつつ、それは本流なき混沌とした状況にも見えるのだ。
はたして、聖子やSMAPのような大仕事をやってのける存在がこのあたりで出現するのだろうか。その兆しがいまひとつ感じられないことも、聖子やSMAPの別格さを際立たせているように思えてならない。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など