■薄暗い空に咲くヒマワリ
春の次は「命の夢」。
「アリさんも出てきますので、『夏の夢』ではなくて、『命の夢』。素直に小さいものたちの命のよろこび、みたいなのを出したかった」
紫色のアサガオの花の奥で蜜を吸うように見えるアリ。「ちょっと寂しげであり、喜んでいるようにも見える」雨にぬれるバラ。日の影った薄暗い空に咲くヒマワリ。
「青空で順光の『ザ・ヒマワリ』という写真ではなく、がんばって生きている感じを表現したかった。そこに夏の陰りが訪れる」
そして「秋の夢」。ここでは「枕草子でちょっと言葉遊びをしてみました」。
作品にはこんな文章が添えられている。
<秋は夕暮れ 夕日のさして 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の絨毯(じゅうたん)を染めたるに 木漏れ陽(び)が三つ四つ、二つ三つと輝くさへ あはれなり>
夕日を浴びるヒガンバナがあると思えば、暗いかすかな光のなかで咲くヒガンバナもある。「暗い印象の花。ほがらかなものもあれば、冬のきざしも感じられる、陰の季節」。
終章は「心の夢」。
ソフトフォーカスで写したクリスマスローズ。大きなボケを生かして写したチューリップ。
「いつもは『春夏秋冬』で壁面を構成して、最後は冬の写真で終わらずに、ナノハナとかに戻ることが多いんですけれど、今回は『心の夢』ということで、ほんとうに夢らしい写真で終わります」
■花の心は私の心
吉住さんは2005年に竹内敏信事務所を卒業して以来、ずっと「花の心」をテーマに撮り続けてきた。
「私はいつも花を擬人化して接してきたんです。動物みたいな感情はないとは思いつつも、感情みたいなものを感じてきた。雨に打たれて寂しそうとか、喜んでいそう、とか」
昔は「花がこう思っている」という、単純なものだったが、次第に「それは私自身なのかな」と、思うようになった。
「花の心は私の心。自分の心のフィルターを通して出てくる感情なので、『花が寂しそう』と思っているときは、自分もちょっとそういう気持ちになっている」