在りし日の夫と山村さん(提供)
在りし日の夫と山村さん(提供)

「河野景子さんに、『こんな時に景子ちゃん、ありがとう』って声をかけたら、『私のことなんてどうでもいいんです』と言ってくれて。近藤サトちゃんはお通夜と葬儀と2日間も来てくれました。皆さんの温もりが本当にありがたかったです」 

  夫を亡くしてそろそろ1年が経つ。最近の生活と心境は? 

  「一心同体だった夫が亡くなり、本当に自分が半分なくなっている感覚です。夫婦ってお互いの素敵なところで繋がっているんじゃなくて、お互いのボロボロになっている姿を愛おしいと思うことでつながっていると思うんです。夫の前だと私は失敗してもいいし、ぐちゅぐちゅの顔で、ボサボサ頭でも良かった。人の愚かさをお互いに愛おしいと思っていくというのを夫に教えてもらった気がします。まだ私には母が施設にいるし、シェットランドシープドッグのカレンとセリーナの2匹の愛犬もいるので、今は倒れられないですね」 

   夫婦の習慣も失ったという。山村さんと宅間さんには2人にしかわからない毎日の儀式があった。 

 「私たち夫婦は毎日ハグをしていました。そして『愛しています』と『おやすみなさい』がひとつになった『あいてまなさい』という言葉をかけあっていました。夫の闘病中も、病院の自動販売機の裏で、1、2、3、4、5、6、7と、7秒間抱き合って、体を離す時に『あいてまなさい』と言っていました」 

 それが10月27日に発売された著書のタイトル「7秒間のハグ」につながった。

 抱き合うのは7秒は長いんじゃないですか、3秒くらいでいいのでは?と突っ込みを入れてみた。 

「7秒じゃなきゃダメなんですよ。絆が深まらないんです」 

 こう真剣に返された。かけがえのない伴侶を失った山村さん。"7秒後"のこれからの活躍に期待したい。 

 (AERAdot.編集部 上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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