
<秋ちゃんは、これからの人生、65歳からの人生のために生まれてきたんだよ。早くにこんな大変なことを経験したのは、これからの人生のためなんだ。凄い使命を持ってるよ> とつづっている。
病院で夫の最後を看取った山村さんは "没イチ"となった。初めての著書を書こうと思い立った理由を山村さんはこう語る。
「夫は病床で、映画の構想を何本も練っていました。私は苦しい思いをする夫に、『これから撮る映画に生かすために病気になったんだよ』と言って励ましていました。なのに彼は死んじゃった。だから映画の代わりに、私が書くことで、宅間の生きた爪痕を残したいと思いました」
山村さんが宅間さんと結婚したのは84年5月26日。結婚式・披露宴は、東京都港区のホテルオークラで開かれ、流行作家の「狐狸庵(こりあん)先生」こと、遠藤周作夫妻が晩酌人を務めて盛大に行われた。
それから36年半の夫婦生活を送ったが、夫婦の危機が訪れた瞬間もある───。 山村さんは34歳のある日、夫の不倫を知ることになる。
「夫が犬の散歩中、ハンカチを入れてあげようと思って彼のビジネスバッグを開けると、10枚ほどのポラロイド写真が束になっているのを見つけたんです。手にとってみると、夫と女性の親密なツーショット写真でした」
山村さんは犬の散歩から帰宅した夫を問い詰めた。夫は最初、「見間違いだ」とごまかしていたそうだが、憔悴する山村さんを前に観念して、こう謝罪したという。
「『僕は十字架を背負うことになるけれども、みっちゃんと一緒に生きて行きたい』と言いました」
山村さんは夫を「秋ちゃん」と呼び、夫は山村さんを「みっちゃん」と呼び、ほとんどケンカもしないラブラブの仲良し夫婦だっただけに衝撃は大きかった。
不倫相手について尋ねると、「それはちょっと…………」と言葉を濁した山村さん。夫の謝罪を受け入れたのだろうか。