教育系YouTuberとして絶大な人気を集める葉一(はいち)さん。いちどは“先生不信”になったが、高校時代に出会った恩師に影響を受け、教育者を目指して東京学芸大学へ進んだ。発売中の「国公立大学 by AERA2022」(朝日新聞出版)のインタビューで当時を振り返り、受験生へのエールを送った。
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「代入するときは、できるだけ暗算を使ってごらん」
「もうひと踏ん張り、行くよ!」
画面越しに見るその姿は、「先生」というより、自分の部屋で勉強を教えてくれる「お兄さん」という感じだ。
自身のYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」で、小中高生向けの授業動画を配信する葉一さん。動画の総再生回数は、4億7千万回に上る(取材時)。
「YouTubeを始める前は塾講師でした。カメラに向かって話すときも、生徒が目の前にいる感覚はずっとありますね」
小学生のころは「ごく平均的な子どもだった」が、中学時代、いじめと授業中に自分の体形を笑いのネタにした教師の言葉に傷つき、心を閉ざした。
「以来、教師は悪だと思っていました。でも高校で出会った数学の先生が、ぼくの気持ちを変えてくれた。教師を目指したのも、その先生の影響です」
■20足りない偏差値 先生を信じて猛勉強
初めての授業では、読み返すとその日のポイントが自然に頭に入る、きれいな板書に衝撃を受けた。授業は厳しかったが、休み時間には生徒と真正面から向き合い、話を聞いてくれた。
「あるとき、その先生から『お前には学芸大が合っている』と言われたんです。性格が校風に合う、絶対に楽しいからって」
その頃には、自分も教師になりたいという気持ちが芽生えており、気持ちは動いた。
「当時は偏差値が20近く足りませんでしたが、先生は『俺が言ったことをやれば、絶対大丈夫』と。その言葉を信じて、学校で配られた参考書を手あかがつくほど繰り返し解きました」