国内で初めてデータサイエンス学部をつくった滋賀大学(撮影/今村拓馬)
国内で初めてデータサイエンス学部をつくった滋賀大学(撮影/今村拓馬)

 メーカーやIT企業に限らず、こうした人材を求めている企業は多種多様だという。

 「本学の大学院には、自治体でもオープンデータなどを発信していかないといけないということで県から派遣される例もありますし、国税局や税関など国から派遣される場合もあります。例えば税関では、不法な輸入品を見つけるために、データサイエンスのなかの『異常検知』という分野が活用できます。派遣されている方は、幅広くデータサイエンスを学ぶというよりは、それぞれの職場の直接的な課題を解決するための研究を目的とされていますね」

■英語と同じレベルで必要とされる時代に

 業種を問わず多くの企業で「DX化」が叫ばれている昨今。「日本がどれだけDX化に舵を切れるかは、どれだけ多くの人が素養としてデータサイエンスの考え方を身につけられるかにかかっている」と指摘するのは、今春データサイエンスを学べるコースを設置した京都橘大の工学部長、東野輝夫教授だ。

 「いくら外部に専門のデータサイエンティストがいても、その人が企業や業界の内情を全て知っているわけではないですよね。どのデータとどのデータを連携させたら役に立つのか、という具体的なことがわからないとDXは進められない。医療、行政、製造業、マスコミ、どの分野でも、当該分野の人にどれだけデータサイエンス教育をしていくかが、国や企業、行政サービスの強さにつながってくると思います」

 こうした考えのもと、京都橘大では、来年度から経済学部をはじめ文系理系を問わず全学部で体系的にデータサイエンス教育を行う方針だという。東野教授は「データサイエンスの知識が、英語と同じくらいのレベルで必要とされる時代がもうすぐ来るだろう」と話す。

 今後人材が増えることで、日本社会や企業にはどういったインパクトがあるのだろうか。

「国はいま、大学・高専から年間約50万人のデータサイエンス人材の輩出を目標に掲げています。現状、日本の情報教育は遅れていて、アメリカのようなIT中心の社会というわけではない。ただ、今後人材が増えていけば、日本が得意とするものづくりとうまく組み合わせて、日本ならではの強みが生まれるのではないかと期待されています。これまでデータサイエンス教育を受けてこなかった世代にも、ちょっと学んでみようかなと興味を持ってもらえるといいですね」(東野教授)

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