実際、企業からの引き合いは多い。滋賀大では2021年春に1期生94人が卒業し、このうち、大学院進学者などを除き70人が就職した。就職先の企業を業種別にみると、NTTドコモ、ソフトバンクなどの「情報通信産業」が最も多く29人。次いで、花王、京セラ、島津製作所などのDX(デジタルトランスフォーメーション)化に取り組む「製造業」が18人、「技術サービス業」が8人だった。他にも、東洋建設などの「建設業」、日本航空などの「運輸業」、SMBC信託銀行などの「金融業」にそれぞれ3人など、業界も企業も幅広い。
「半数以上の学生はデータサイエンティストとしての就職でした。これまでの滋賀大の進学実績とは異なる情報通信産業への就職が多かったのが特徴です。また、同じ製造業でも、経済学部は事務系総合職が多かったのに対し、データサイエンス学部からは技術系総合職での就職が多い傾向にありました。注目が集まっていたということもあり、同じキャンパス内の他学部よりも就職先を選べていた印象です」
■企業が優秀な社員を大学院に派遣
さらに、滋賀大では2019年に大学院にデータサイエンス研究科を設けた。ここでは社会人派遣を受け入れており、情報通信系の大手企業などから若く優秀な社員が送り込まれているという。そうした社会人との交流が学生の就職につながった例もあったという。
「連携している企業から派遣された大学院生が学生に声をかけてその企業に就職し、社内で独立した部署をつくったという事例もありました。中途採用はいま、取り合いで採用できないので、本学の卒業生を採用しよう、と思ってくださる企業があるのではないかと思います」
データサイエンスというと理系のイメージが強いが、「実際は文系的思考力が大いに役立つ」と竹村教授は話す。
「データサイエンスを構成する要素は大きく分けて三つあります。計算機科学というデータを扱うためのコンピューター利用の分野、データを分析する統計学の分野、そのデータをどう価値づけしていくかという価値創造の分野です。計算機科学と統計学は工学的な部分で、データサイエンスの基礎。一方、そのデータをビジネスやマーケティングにどう使うのか、という応用方法を考えるのが価値創造です。価値創造の場面では経済や経営など文系的思考が必要です」