林:林芳正さんって、文化にも造詣が深いんですよね。亡くなった中村紘子さん(ピアニスト)がお招きくださるおハイソな会に呼ばれたことがあるんですが、外務官僚や文化庁長官などそうそうたるメンバーが招かれていたんですね。ゲストで呼ばれた方がバイオリンを弾いて、奥さまはピアノを弾くとか、セレブの方々が芸を披露する会なんですけど、そこで林さんはオペラのアリアをとうとうと歌われていました。
森本:林議員は、議員だけで編成された「Gi!nz(ギインズ)」というバンドのメンバーでピアノとボーカルを担当されていますね。
林:ちょっと話が変わりますが、安倍晋三さんも英語がかなりお得意だったとか。
森本:16年の伊勢志摩サミットでは、その直前に起きた沖縄の女性殺害事件について、安倍総理がオバマ大統領に通訳を介さず自分の英語で説得なさったことがあり、印象的でした。安倍さんは、自分の考えをしっかり持ったリーダーです。
林:そうですか。
森本:通常、大臣が総理大臣に政策の細部について指示を受けに行った場合、提示された解決法に納得すれば「そうしよう」というスタイルをとられることが多い。一方、安倍さんは、ほとんどの問題について、選択肢が示される前から、ご自分の考えを持っているタイプでした。とくに外交や防衛・安全保障については、幅広い見識をお持ちで、答弁も原稿を見ずにされた稀有の総理でしたね。
(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)
森本敏(もりもと・さとし)/1941年、東京都生まれ。防衛大学校理工学部電気工学科を卒業後、航空自衛隊を経て外務省アメリカ局安全保障課に出向。79年外務省入省、情報調査局安全保障政策室長など、一貫して安全保障の実務を担当。退官後、野村総合研究所を経て拓殖大学に所属。その間、慶応義塾大学、中央大学、政策研究大学院大学などで講師・客員教授を務める。2009年初代防衛大臣補佐官、12年民間人初の防衛大臣に就任。16年3月から今年3月まで拓殖大学総長、4月から同顧問。
※週刊朝日 2021年12月3日号より抜粋