森本:「台湾を助ける」には、政治の覚悟と綿密な準備と日・米・台湾の協議が必要です。アメリカは、1979年に中国と国交を樹立した際、「一つの中国」を選びました。一方、米国議会は「台湾関係法」という国内法をつくり、台湾に武器を供与しています。さらに米軍は、台湾軍の訓練も行っています。つまり、中国と外交関係を持ちつつ、台湾を守る姿勢をとり続けているんです。

林:はい。

森本:バイデン大統領は、台湾が中国から攻められたらどうするかと聞かれて「台湾を守る」と発言しましたが、米政府の報道官は、「従来の政策に変更はない」と弁解しました。これは「戦略的曖昧さ」と言われています。一方、日本も72年、日中国交回復のときに「一つの中国」を選んだのですが、米国ほど、はっきり態度を示していません。だから台湾は「日本は協力してくれない」という不満を持ち続けているんです。

林:そうですか。岸田総理は、外交問題や防衛問題について期待できると思ってよいんでしょうか。

森本:多くの人材に支えられて、誠実に対応されるので、外国からの評判は非常によいと思います。

林:でも岸田さん、防衛大臣の経験はないですよね。

森本:防衛大臣はやっておられませんが、岸田派には、林芳正、小野寺五典など多くの人材がいますし、幅広い見識があるんじゃないでしょうか。

林:林芳正さんは外務大臣になられました。

森本:林大臣は政策通で、防衛だけでなく経済問題にも強く、計り知れないほどの見識があります。日本の議員団が、米ワシントンの著名な経済研究所に行って討論をした際、私も同行したことがあります。日本側は林芳正さんが1時間ほど話をされていましたが、メモ一枚持たず、英語でアメリカ側と経済理論について堂々と議論し、ほとんどやり込めていました。

林:すごいですね。

森本:このときの通訳は、当時の佐々江駐米大使の夫人でした。通訳の会社をやっておられる方で、その優秀な通訳を介して議論の中身を聞いたのですが、私は正直言って半分もわかりませんでした。

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