林:先生、ちょっと背筋が寒くなってきました。
森本:そういう事態は中国も望んでいないので、第二ステージにおいて台湾を弱体化させ、何らかの陽動作戦を展開して台湾やその周りに力の空白地帯を作り、米国の介入を招く前に、最小限の軍事力で、短期間に統一してしまおうと考える可能性は高いのです。しかし、この場合、日本も無関係ではいられません。だから日本は、本気でアメリカを助けないといけません。日本にとっても国家存立の危機になります。
林:いま、日本の自衛隊はどうなんですか。
森本:日本の自衛隊は、日本および日本の周辺を守るのに十分な防衛力はありますが、まだ足りない部分があります。特に、宇宙とサイバーについての能力が不十分です。デジタル庁やこども庁は重要ですが、宇宙庁やサイバー庁も必要だと思います。また最近、中国、ロシア、北朝鮮が始めている極超音速兵器や無人機の脅威にも対応する必要がありますね。
林:日本の防衛費は十分ですか。
森本:国家の安全を確保するためには、GDP1%弱の防衛費では足りません。ヨーロッパ各国やオーストラリアは2%を超えています。韓国の防衛費は日本よりも高くなりつつある。日本が、GDPの1%という防衛費で安全を維持できているのは、アメリカに「おんぶにだっこ」できたからです。しかし、米国の国防予算は現在、減る一方です。米国の機能を補填する必要が出てきています。
林:そうだったんですか。
森本:アメリカは「中国とロシアの双方には対抗できない。同盟国の協力がなければやっていけない」と言い始めています。同盟国とは、インド太平洋では日本と韓国とオーストラリア、フィリピンなどです。いままで米国に依存した防衛を展開してきた日本は、どうしたら安定した国家を維持できるか、台湾問題を無事に乗り切ることができるかという、非常に大きな岐路に立たされていると思いますね。
林:私たちの大多数は、それにまだ気づいていないんですね。台湾は非常に親日的ですし、今後「台湾を助けてあげたい」という世論が起こるのではないでしょうか。