
常に読者と向き合ってきた三省堂書店は140年を迎えたのを機に、神保町本店ビルの建て替えを予定している。
12月の日曜の朝、十数人が10時の開店を前に店頭に集まっていた。
「これといって目的の本があるわけではありませんが、ここにはたくさん本があるので思わぬ発見がありますよね」
と栃木県在住の60代の関口明宏さん。今日は東京に来たついでに立ち寄ったという。
「友達の子どもへのプレゼントとしてあげる絵本を見に来ました。ネットでは内容や本の感じがわからないので、実物を見て決めたいと思います。三省堂書店はいろいろと相談に乗ってくれるので、とても助かります」
とは石川県から来た30代の松本正子さんである。この日は三省堂書店を目指してきたそうだ。
今後について中嶋さんは「2022年4月以降に解体が始まりますが、その後どんなビルにするのか、どんな書店にするのかは、まだ模索中です。ただ、今までと変わらず本好きの人の要望に応えていく書店にしていきたいですね」と話す。
三省堂書店は本はもちろんだが、文具、雑貨、食品やカフェなど、生活を豊かにするものを幅広く扱っている。
「リアルな書店は本を楽しみながら探せるというエンターテインメント空間だとも思います。そして、店の人と触れ合いながら本を買うことが、一種の癒やしにもなるような気もします。そして何より、本を通じてさまざまな知識を吸収したり、心も豊かにできたりします。三省堂書店はそんな一人ひとりの学びのサポーターとして存在していきたいですね」(中嶋さん)
(本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2021年12月24日号