入江たか子のサイン会の様子(1934年)
入江たか子のサイン会の様子(1934年)

 三省堂書店の店頭では、書籍の内容などを宣伝するポップ広告も楽しい。このポップ広告を一つひとつ読んでいくと、あっという間に時間が経つ。さまざまな試みはどのようにして生まれているのだろうか。

「うちは現場に任せています。書店員が一番本のことを知っていますから」(同)

 書店員はやはり本好きが多いことがわかる。

「店頭に立つ書店員と比べると、私は本好きと言えるかどうかわかりません。ただ、本に助けられましたね。若いときは、それなりに悩みますね。そんなとき、どこに助けを求めていいかわからないときも本は冷静に応えてくれました。本を読み漁って自分の平衡を保っていた時期もありましたね」(同)

 三省堂書店・神保町本店の現在のビルは、創業100周年を記念して1981年に竣工した。キャッチフレーズは「収容数約百万冊。広さも在庫も日本一」。開店の日、明治大学応援部の友情バンド演奏が鳴り響くなか、客が店内へと流れ込み、どの売り場も人があふれた。何度も入店制限をしたという。

「他に類を見ない大きな書店だったので、期待は大きいものがあったのでしょうね」(同)

 開店初日の入店客数は10万人以上の大きなイベントとなった。

 イベントといえば、村上春樹氏の『騎士団長殺し』の販売会も大きな話題になった。店舗正面の「三省堂書店」の文字を「村上春樹堂」の看板に変え、深夜0時のカウントダウン後に開店し、『騎士団長殺し』のタワー積みが客を迎える中、販売が開始された。また、「新刊を徹夜で読む会」も同夜開催され、多くの読者が集った。

「こうしたイベントやサイン会などは、よく行われていますし、多くの方が来ても混乱はありません。大型店舗ならではの展開です」(同)

 神保町は本の街であり、大手出版社のほか、個性的な書籍を刊行する中小の出版社が数多く存在するのも特徴である。その一つが大空出版だ。

 大空出版はかつて毎日新聞社にいた加藤玄一さんが2000年に起こした会社で、『まだある。』シリーズや写真絵本『がんばれ!ロウソクギンポ』などの話題の書籍を出している。加藤さんには三省堂書店について強烈な思い出がある。

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