テレビ局TBSを退社したのち、プルデンシャル生命保険で「前人未到」の圧倒的な業績を残した「伝説の営業マン」である金沢景敏さん。営業マンになった当初はたいへん苦労しましたが、あることをきっかけに「売ろう」とするのをやめた結果、自然にお客様から次々と「あなたからサービスを買いたい」と連絡が入るようになりました。本記事では、金沢さんの営業手法のすべてを明かした『超★営業思考』では紹介し切れなかった、コミュニケーションの裏技をご紹介します(構成:前田浩弥)。
営業マンは「話す」より「聞く」ことが大事
世の中に営業術を説くビジネス書はあまたあります。
そのほとんどが、「トーク術」や「プレゼン術」など、「営業マン側が話す」ことに重きを置いた本です。
デジタル大辞泉によれば、営業とは「得意先を回って顔つなぎをし、商品の紹介、売り込みをすること。また、新しい得意先を開拓すること」とあります。この定義に沿えば、営業マンにとっては、やはり「話す」ことが大切な要素であるといえるでしょう。
しかし僕は、それ以上に重要なのが「聞く」ことだと考えています。お客さまに気持ちよく話していただくことこそが、営業を成功させる最大のポイントと言っても過言ではないと思うのです。
なぜなら、営業マンは、「どのような商品・サービスを用意しているのか」という情報はいくらでも話すことができますが、「お客さまが何に困っているのか?」「お客さまが何を悩んでいるのか?」「お客さまがどのような商品・サービスをほしがっているのか?」という情報は、お客さまの話のなかから察知するほかないからです。
しかも、お客さまの話をただ一生懸命聞くだけで、「この営業マンは、自分の話を真摯に聞いてくれる」と好印象を持ってもらうことができます。さらには、自分が話したかったことを気持ちよく話させてくれた相手に対して、「今度は、この人の話を聞いてあげなければ」「この人に何かお返ししてあげたい」と思ってもらうことができます。
お客さまにそのような気持ちになっていただくことができれば、多少、トークが下手な営業マンであっても、確実に成績は上がっていくのです。むしろ、お客さまの気持ちを顧みず、営業トークを立板に水で話したところで、そんな話を身を入れて聞いてくださるお客さまなどいらっしゃらないのです。
「面」で話して「点」を探す
では、どうすれば営業マンは、「話し手」から「聞き手」に回ることができるのか。
僕が心がけていたのは、「“面”で話して“点”を見つける」ことです。
相手との距離を近づけるコツは、とにかく共通点を見つけること。出身地、趣味、スポーツ、出身校、子ども、おいしい食事……なんでもいいので、お互いに深く話せる「共通の話題」を見つけることに尽きるのです。
もちろん、共通点を探すために、お客さまから不躾に「聞き出そう」「探り出そう」とするのはダメ。そうではなく、はじめは当たり障りのない話題を提供しながら、お客さまと言葉のキャッチボールをします。自分が興味のある話題を、広く浅く「面」で展開していくイメージです。
そして、さりげなくお客さまの反応を観察します。
何かの話題に触れたときに、グッと身を乗り出したり、声のトーンが上がったり、パッと表情が明るくなるような瞬間があるはずです。それは、お客さまが興味をもっている話題である証拠。その「点」を見つけ出すことさえできれば、あとは、その「点」を掘り下げていけば、確実にお客さまとの会話は弾みます。そして、お客さまの話が乗ってくれば、自然と「聞き手」に回ることができるわけです。