いつの時代も「スター・松田聖子」であり続けた
いつの時代も「スター・松田聖子」であり続けた

 しかし、聖子はそうではない選択をして成功。いわば、新たな欲望のかたちを天下に示した。それは世の中の流れとも合致していて、結婚・出産を経ても、家庭の外で輝きたいという女性が増えるなか、大いに支持されたのだ。

 ちなみに、聖子がママドルになった翌年「ママはアイドル!」(TBS系)という連続ドラマが放送された。中山美穂が「中山美穂」というアイドルの役で主演。子ども役のなかには、後藤久美子もいた。まるでフィクションが現実を追いかけたみたいなかたちだが、ドラマのヒロインは後妻で子どもたちとの血のつながりはない。聖子が作り出した現実のほうが、フィクションの上を行っていたともいえる。

 ただ、この離れ業はもろ刃の剣でもあった。これにより、メディアや世間における、聖子に関してはプライベートも芸みたいなもので、自由に消費して構わないという空気が強化されたからだ。彼女もそこにいちいち文句を言わないので、消費され放題になる。

 象徴的だったのが、90年に発覚した米国人俳優、ジェフ・ニコルスとの不倫騒動だ。94年に出版された「真実の愛」のなかで、彼は「僕と聖子の3年間」(帯の見出し)を赤裸々につづっている。

 本には聖子が正輝との結婚生活は完全に破たんしていると語り、今は別居中、正輝もジェフの存在を知っていること……。

 また、聖子が自分の父親に「私をわかってくれるのはジェフしかいない」と言ったところ「気持ちはわかるけど、人生、欲しいものが必ずしも手に入るとは限らない」と、たしなめられたという話も記されている。

 この本に書かれていることが真実とは限らない。だが、メディアが報じていた夫婦の関係ともある程度符合することは確かだ。聖子と正輝は結婚後、しばらくすると距離を置くようになり、それぞれがおたがいを束縛しないことでバランスを保っていた、というものだ。自由に生きたい聖子はもとより、正輝もまた、スターすぎる妻から自由でいたかったのだろう。

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沙也加の複雑な気持ちは聖子にもわかる