亡くなった神田沙也加さん
亡くなった神田沙也加さん

 ふたりは97年の年明けに離婚するが、それは久々に年末を一緒に過ごしたところ、ケンカになったことが一因ともいわれた。そんな結末が、この夫婦生活の本質を物語っているようでもある。

 こうした環境は、娘にとっては複雑だろう。沙也加はのちに、舞台女優へと導いてくれた大地真央のことを「ママ」と呼ぶようになった。あくまで「芸能界のお母さん」という意味合いだが、実母への当てつけにも思えなくはない。そんな娘の複雑な気持ちは聖子にもわかるから、後ろめたい気分も抱えていただろう。

 それでも、沙也加が幸せに生きてさえいれば、聖子ならではの母親ぶりも「若気の至り」とか「スターの特殊性」で済んだはずだ。しかし、こういうかたちで永遠の別れとなった。年をとってから我が子に先立たれるのは、なおさらこたえるともいう。自責の念にもさいなまれたのではないか。

 聖子が正輝と短い会見をしたときにも、そのつらさがひしひしと感じられた。彼女も来年は還暦、若々しく輝くスターであり続けることに疲れつつあるのではないか。

 そもそも、スターというものは常に、世間のイメージに応えようとして無理をしている。たとえば、大して強くもないのに酒とケンカの武勇伝を好んだ横山やすしや、がんを告白した会見でわざとタバコを吸ってみせた勝新太郎もそうだ。

 聖子は今年4月「青い珊瑚礁」をセルフカバー。MVでは約40年ぶりに聖子ちゃんカットも披露して、生けるファンタジーとしての健在ぶりをアピールしている。が、年末にはこんなかたちで現実の重さを突き付けられ、打ちひしがれることになってしまった。おそらく、人生最大のつらさを味わったといっても過言ではないだろう。

 それを思えば「紅白」辞退もむしろ、自然な選択という気がしてくる。なお、最近は「スターもひとりの普通の人間だ」という考え方が好まれるので、今回の選択も世間には受け入れられやすいのではないか。

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