序盤につまずいたアジア最終予選で伊東純也は日本の半分以上の得点に絡んだ
序盤につまずいたアジア最終予選で伊東純也は日本の半分以上の得点に絡んだ

 多くのポジションにサブを含め実績のある選手が並ぶ陣容は、日本が出場した過去6回のW杯と比較しても、最強と言って間違いないだろう。

 ただ、W杯1次リーグで、優勝4回のドイツ、同1回のスペインの強豪2カ国に加え、北中米カリブ海予選4位で、ニュージーランドとの大陸間プレーオフを勝ち抜いた実力国コスタリカと顔を合わせることを考えれば、不安もある。

 特に懸念されるのはセンターフォワード(CF)。相手ゴールに最も近い重要なポジションだが、いまだ適任者が見つかっていないからだ。

 アジア最終予選の途中までは、前回のロシアW杯で「大迫、半端ないって」というフレーズが流行するなどした大迫勇也(32、神戸)の指定席となっていた。だが、コンディション不良で代表チームを離れた2月以降、穴は埋まっていない。

 9月の米国戦では前田が先発し、スピードと前線からの積極的な守備で一定の評価は得たものの、得点力という点では物足りなさは否めない。横浜マに在籍していた21年にJリーグ得点王に輝いているが、起用法も異なり、そのプレーを代表で発揮できていない。森保監督は大迫の復調を待ちたい構えを見せているとはいえ、32歳という年齢や、昨年夏にドイツから帰国したことを踏まえれば、これから上り調子になるとは考えにくい。

 守備では、センターバック(CB)やボランチでプレー可能な板倉滉(25、ボルシアMG)が、9月に左ひざを痛めて復帰がW杯直前になると言われているのが気がかり。復帰できたとしても、ぶっつけ本番の起用では大きなリスクを伴う。加えて主将の吉田麻也(34)が今季移籍したシャルケの苦しいチーム事情のなかで状態を崩しているように見えるのが心配だ。

■「勝てる可能性はある」

 一方で、ドイツ、スペインという高い壁にも選手から一切ひるむような声は聞こえてこない。

「ドイツはメンバーは豪華だが、所属チームでうまくいっていない選手もいる。いまは(14年ブラジルW杯で優勝した)本当に強かったときとは違うし、勝てる可能性はある」(鎌田)

「ドイツもスペインも上を目指すには、絶対に倒さないといけない相手。欧州でプレーしている選手は日常からそういう選手と試合をしているし、全然普通に戦えると思う」(伊東)

 かつて日本代表が「悲劇」を味わったカタール・ドーハで、こんどはどんなドラマが見られるかが楽しみだ。(ライター・栗原正夫)

AERA 2022年10月31日号