シャラ ラジマさん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
シャラ ラジマさん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
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 金髪に褐色の肌。青い瞳からは、鋭いまなざし。

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 人種を超えたボーダーレスな存在でありたい――。そう願い活動するのは、バングラデシュにルーツを持つモデルのシャラ ラジマさん。広島県で生まれ、幼い頃は親の仕事の関係でバングラデシュと行き来しながら、9歳の頃に下町情緒あふれる東京都北区に移り住んだ。

 大学生の頃にモデル活動を始め、今ではドラマやバラエティーにも出演。そんなシャラさんが一躍注目を集めたのは、ちょうど1年前のコラムがきっかけだった。

<私が「美しい」と思われる時代は来るのか?“褐色肌、金髪、青い眼”のモデルが問う>

 そんなタイトルで公開された記事はインターネットを駆け巡り、シャラさんの存在を世の中に突き付けた。

 金色に染めた髪とカラコンで飾る青い瞳は、そのルーツをどこかあいまいにする。コラムを読み、凝り固まった価値観へのモヤモヤが吹き飛んだという人もいれば、批判的なコメントも連なった。書いたシャラさん本人も反響の大きさに驚いたという。

「私は、世の中にとっての全ての間のような存在でいたいんです」

 そう飄々と言ってのけるシャラ ラジマとは何者なのか。

*  *  *

「シャラって何人だっけ?」

 9歳で日本に移り住んでから、幾度となくそう問いかけられた。褐色肌、金髪、青い瞳。そしてその口からは、流暢な日本語が飛び出す。

「来日したばかりの頃は日本語は話せませんでしたが、言葉はもちろん日本の生活にもすぐに馴染んでいたので、みんな私がバングラデシュ出身だということを忘れてしまったんだと思います。新しく知り合う人だけでなく、小中学校の同級生からも『ハーフだっけ?』『日本の血が入っているの?』と勘違いされることが多かったんです」

シャラ ラジマさん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
シャラ ラジマさん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

 大学進学で王子から出たあとも、シャラさんのアイデンティティーを問いかけられることは頻繁にあった。

「どっちの心が強いの?」「カレーと出汁どっちが好き?」

 繰り返される質問にさぞうんざりしたのかと思いきや、「まったく嫌ではなかった」とシャラさん。一方で、自分の人種に明確な線引きができない感情を抱いていたという。

「私のなかでは、自分は日本人でもあり、バングラデシュ人でもあり、そのどちらでもないという感覚があるんです」

 実は、この「どちらにも属せない」感覚は、幼い頃からあった。シャラさんは幼少期をこう振り返る。

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移民コミュニティーとは距離をとった