週刊朝日 2022年9月23・30日合併号より
週刊朝日 2022年9月23・30日合併号より

「2009年から75歳以上に義務づけられ、17年に内容が強化されました。さらに今年からは75歳以上で過去3年に『信号無視』や『速度超過』などの違反歴がひとつでもあると『運転技能検査』を受検し、合格しないと免許が更新できなくなりました」と長さんは話す。

 導入にはやはり近年、シニアドライバーによる交通事故が社会問題化したことが背景にある。アクセルとブレーキの踏み間違いでコンビニに突っ込んだり、駐車場から転落したりといったニュースを見て「また高齢ドライバーか」と思うことはたしかに多い。だが、長さんは言う。

「警視庁が発表した統計によると、ここ10年で交通事故全体に占める65歳以上の高齢ドライバーの割合はたしかに増えています。ただそもそも免許保有者に高齢者が増えている。10年間で約2倍といわれます。そして交通事故件数は減少傾向にあります。つまり免許保有者の比率としてみると、むしろ高齢ドライバーの事故件数は減っている。そして交通事故を起こすのは圧倒的に20代、30代が多い。決してシニアドライバーばかりが事故を起こしているわけではありませんが、高齢ドライバーによる事故はインパクトが大きくニュースに取り上げられやすいために“高齢ドライバー=危険”という印象が強くなっているのです」

「認知機能検査」は医療現場で「認知症の診断」に使用されるものをベースにしている。だがシニアドライバーによる事故は必ずしも認知症患者が起こしているわけではない。長さんは続ける。

「例えば19年4月に起きた池袋の暴走事件。大変に痛ましい事件ですが、運転をしていた当時87歳の加害者は『認知機能検査』では問題がなかった。しかし車を操作するための手足の運動機能が十分だったかは疑問です」

 車を操作するためには手足の運動機能や、それを動かす脳が正しく機能する必要がある。そうした危険を放置しないためによりきめ細かい検査体制が整えられたのだ。

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