世界銀行によると、インドでは1日に3.2ドル(約425円)以下の所得で暮らす貧困層が人口の約4割を占める。1割の富裕層が7割以上の富を独占するが、兵庫県立大学の福味敦教授(インド経済論)は、こう指摘する。
「経済成長が続く中で極端な金持ちが増え、格差が拡大していますが、一方で一定のトリクルダウン(恩恵が低所得者層にも及ぶ)効果もあり、国全体でボトムアップが進んでいます」
■米国をしのぐ文化大国
中国などとともに新興5カ国(BRICS)の一つで、国内総生産(GDP)は世界6位。いまや世界有数の経済大国だ。
「インドは、米国をしのぐ文化大国でもあります」
と話すのは『新インド入門』の著者で、国際交流基金マニラ事務所副所長の田中洋二郎さん(42)。11年から5年間、ニューデリーで勤務した経験をもとに、本当のインドを知ってもらいたいと様々な数字を用いて著書をまとめた。それによると、インド全体の年間映画制作本数は約2千本で米国の約3倍。年間観客動員数は約2億人で、米国の約2倍にも上る。
インド旅行を企画している「アンジャリツアー」(東京都渋谷区)代表の大森美樹さん(48)は、学生時代にインド映画に夢中になった。CGだと思ったら、特設セットによる実写だったこともある。そのスケール感に圧倒されたという。
外資系証券会社などの勤務を経て起業。以来、映画のロケ地巡りなどのツアーを実施している。大森さんが「沼」にはまったのは、
「アジアの他の国を訪ね、遺跡やお芝居などすべての文化と芸術がインドに通じていることに気がついた。本物を見てみたい!と思ったのがきっかけです」
近畿大学の豊山亜希准教授(インド美術史)は、
「インダス文明と近未来が同居している国。世界遺産にある神々の彫刻を見ても、厳格というよりは、自由にのびのびしている。独特の美意識があります」
■ベジタリアンの食生活
その美意識は、身近なところでは布製品に生きているという。良質なオーガニックコットンに、伝統的なブロックプリント。日本にはない色鮮やかなワンピースやハンカチなどが手に入る。大森さんが企画するツアーでも、参加者の多くがショッピングを楽しんで帰路につくという。