この名を私は愛している。そうか、パンダの暁暁も同じ名前だと思ったら、大いに興味が湧いた。
これはもう、見に行くしかないか。
テレビで何度も御対面をし、まちがえないようにして、暁暁に声をかけよう。といっても、一般公開されたら、いくらコロナの時期といっても人々が殺到するだろう。
今までの例では、立ち止まることが禁止されていたが、これではまるで素通りするだけで、美術館で泰西の名画など見せる時と同じだ。ゆっくり声をかけるには、よほど時を選ばねばならない。
しかし、この機を逃しては本物のパンダと会えそうにない。
という話を聞いた友人が言う。
「それってパンダに興味を持ったというより、暁子という自分の名への興味でしかないじゃない。あなたはパンダじゃなく、自分を愛しているのよ!」
そう。自分を愛することから他人やパンダを愛せるようになるのだ。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年1月21日号